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■会社員時代編・第3章 ・・・ 郷愁

目標の定まらない日々を過ごすうちに年も暮れ、年末年始の休暇に女房の実家である周防大島に帰省した際のことである。
周防大島の四町(久賀、大島、橘、東和)が広域合併により一つの町になることを小耳に挟んだ。
その時は「ああ、そうなのか」程度にしか考えずのんびり正月気分を満喫していた訳だが、休暇も終わり横浜での日々を過ごす中、周防大島の合併が妙に頭の中でひっかかった。
故郷ってなんだろう。
郷愁ってなんだろう。
ふと考えてみた。

都会で暮らす地方出身者の方なら郷愁にかられたことがおありであろう。
私の場合は広島東洋カープを応援したり、田舎から贈ってもらうミカンや鮮魚などありがたく頂戴することで郷愁に浸り、たまにTVで放映される山口や広島に関する話題に一喜一憂するといった具合であった。
どうも「故郷忘れがたく」というのは人間の本能であるらしい。
こんなことを思いながら「都会で暮らす人達と郷里をつなぐサービスがあれば喜ばれるだろうな」と、これまでとは別の視点から起業について考えるようになった。
製造・販売といった発想から、ベネフィット(便益)を重視した考え方に変わっていった訳である。

人に喜ばれる仕事・・・さぞかしやり甲斐のある仕事だろう。
いや、仕事(事業)というものは人に喜ばれてこそ成立するものではなかろうか。
人に喜ばれ、必要とされるモノであるがゆえにお客様はその対価としてお金を支払い、業者は更にお客様に喜んで頂ける商品やサービスを提供する。
考えれば当たり前のことである。
資本主義における不文律である。
その当たり前のことを考慮せず自己満足の域で起業を考えていたゆえ、事業として成立しない(メシを食える見込みがない)と自問自答に陥っていたのは当然のことである。
お客様に喜んで頂くという大命題を忘れた自分の喜びだけを追求する起業など、事業として成立するはずがないということだ。

そこで主体を自分からお客様へ転換し、起業について考えてみた。
前述の通り、お客様に喜んで頂ければ事業としては成り立つはずである。
ただし自分が満足することは簡単であるが、他人を満足させることは決して容易なことではない。
仮にお客様に喜んで頂けるであろう仕事を始めたとしても、その内容が希薄であればお客様には満足して頂けない。
依然、起業への道のりは険しいようだ。
しかし自分の中で起業の動機付けを軌道修正出来たことにより、人に喜ばれ自分としてもやり甲斐を感じる仕事というものがぼんやりと輪郭を帯びてきた。
郷愁というキーワードから導き出された「都会で暮らす人達と故郷をつなぐサービス」である。
起業への想いは止まらない。